こんにちは!SONAEAREBAです。
昨日2026年7月7日、
火山防災の歴史を変えるかもしれない研究
が発表されました。
地震活動の統計量「b値」の
出典:東北大学「地震データで火山の『信号機』——噴火の切迫度を準リアルタイムで評価」2026年7月7日
変化を緑・黄・赤の信号機に置き換え、
火山の地下にたまる応力の状態と
噴火の切迫度を準リアルタイムで評価する手法
「火山信号機警報システム
(VTLAS: ブイトラス)」を開発しました。
本手法を地質環境の異なる世界の火山で
系統的に検証したのは世界で初めてです。
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2026/07/press20260707-02-trafficlight.html
「信号機」。
「赤が出たら危ない」というのは、
誰でも直感的に理解できます。
今まで専門家だけに読み解ける数字だった「b値」が、
緑・黄・赤というシンプルな形で、
準リアルタイムで確認できるようになる
——これが今回の研究の意味です。
この論文は2026年7月6日(日本時間)付で、
英ネイチャー・ポートフォリオの
学術誌「Scientific Reports
(サイエンティフィック・リポーツ)」
電子版に最終掲載(版面確定版)されました
(オープンアクセス)。
世界最高レベルの科学誌に掲載された、
正式な研究成果です。
この研究を作ったのは誰か
今回の研究は、
日本・コンゴ民主共和国の国際共同研究グループです。
地震予知総合研究振興会・静岡県立大学・東北大学・
京都大学・キンシャサ大学(コンゴ民主共和国)の
研究者たちが共同で開発しました。
出典:東北大学理学研究科
「地震データで火山の『信号機』」プレスリリース
https://www.sci.tohoku.ac.jp/news/
20260707-14530.html
なぜコンゴ民主共和国が参加しているのか。
それはこの研究の核心に関わります
——「性質の異なる世界の火山で」検証するために、
アフリカ大陸の火山データも活用しているからです。
「b値」とは何か——30秒でわかる解説
この研究の鍵となる「b値」を、
わかりやすく説明します。
このシリーズの「臨界度」の記事(5月28日)で
「b値」を解説しました。
おさらいすると——
地震にはマグニチュードの小さい地震が多く、
大きい地震が少ない、という法則があります
(グーテンベルク・リヒター則)。
その「小さい地震と大きい地震の比率」を
表す数字が「b値」です。
b値が高い(=1.5前後)→小さい地震が相対的に多い
→地下の応力が低い→噴火しにくい状態
b値が低い(=0.5前後)→大きい地震が相対的に増える
→地下の応力が高まっている→噴火しやすい状態
「b値が下がる=地下でエネルギーが高まっている」
というサインです。
これを信号機の色に変換するのが
「VTLAS(ブイトラス)」のシステムです。
「信号機」の3段階——何が「赤」なのか
研究プレスリリースには、
具体的な仕組みが書かれています。
地震活動の統計量「b値」の変化を
緑・黄・赤の信号機に置き換え、
火山の地下にたまる応力の状態と噴火の切迫度を
準リアルタイムで評価します。
🟢 緑(GREEN):b値が平常範囲内
→「地下は比較的安定している」
→ 通常の監視を継続
🟡 黄(YELLOW):b値が低下傾向
→「地下でエネルギーが蓄積し始めている」
→ 監視強化・注意が必要
🔴 赤(RED):b値が閾値を下回る
→「地下の応力が臨界に近い」
→ 噴火への警戒が必要
この「赤信号」がどれほど信頼できるのかを
示すデータが、研究の核心です。
「b値の低下を『赤信号』とみなすと、
その約39%が10日以内の噴火に先行し、
衛星観測(InSAR等)など他の前兆指標と
同等の的中率が得られること」
出典:東北大学プレスリリース
39%が10日以内の噴火に先行
——これをどう解釈するか。
「61%は外れるではないか」
と感じた方もいると思います。
でも、比較の対象を考えてください。
現在、最も信頼されている火山前兆観測技術は
「InSAR(衛星合成開口レーダー)」などの
衛星観測です。
この衛星観測と「同等の的中率」。
つまり、すでにある地震データだけで、
衛星という高コストな機器と同じ精度が出た
ということです。
御嶽山の悲劇と、この研究の「限界」
今回の研究が誠実なのは、
「できること」だけでなく「できないこと」
も明確に示している点です。
プレスリリースには、非常に重要な記述があります。
御嶽山の2014年噴火ではb値の低下が約8%にとどまり、
警報の基準(10%)には届きませんでした。
地下水や熱水が関与する水蒸気噴火は、
マグマの上昇に伴う明瞭な応力変化を伴いにくく、
地震活動からの把握が一般に難しいと考えられます。
b値だけに頼らず、地殻変動・火山ガス・熱などの
観測と組み合わせることが重要です。
出典:東北大学プレスリリース
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/
tohokuuniv_press20260707_web02_trafficlight.pdf
2014年の御嶽山噴火——死者・行方不明者63人という、
戦後最多の火山噴火災害でした。
あの噴火は「水蒸気噴火」——マグマではなく、
地下水が熱せられて爆発する噴火でした。
今回のVTLASシステムは、
この「水蒸気噴火」を検知することが難しい。
これは研究チーム自身が率直に認めている、
重要な限界です。
一方で、伊豆大島の2000年噴火では
数日前に赤信号が点灯しました。
出典:東北大学プレスリリース
「マグマが上昇してくるタイプの噴火」では機能し、
「水蒸気噴火」では難しい
——この区別を理解した上で使うことが重要です。
「新しい機器不要」という革命的な意義
この研究が「世界初」とされる理由の一つは、
手法そのものより「実用性」にあります。
火山の地下で何が起きているかを、
新たな観測機器を設置しなくても、
既にある地震データから準リアルタイムで
評価できることが重要な特徴です。
出典:東北大学プレスリリース
「新しい機器を設置しなくてもいい」
——これは防災の観点から見ると革命的です。
世界には観測インフラが十分に
整っていない火山が数多くあります。
特に発展途上国の火山では、
高価な衛星機器を新規導入するのは困難です。
でも「既存の地震計のデータ」は、
多くの国でも蓄積されています。
そのデータをVTLASで分析するだけで、
噴火の切迫度が「信号機」として見える
——これは世界規模での火山防災を
劇的に向上させる可能性を持っています。
このシリーズとの「深いつながり」
だいすけさんと共に積み上げてきた
このシリーズを読んでいる方には、
今日の記事で「あ、あの話とつながった」という
感覚があると思います。
5月28日の「臨界度」記事(九州大学)との関係:
九州大学の松本聡教授が発表した「臨界度」も、
地震の「b値」と「効率」を組み合わせた指標でした。
今回のVTLASは、同じ「b値の変化」を
火山に応用したシステムです。
富士山噴火シリーズ(5月・6月)との関係:
このシリーズで
「富士山は前兆があっても噴火しないウソをつく山」
とお伝えしました。
VTLASが実用化されれば、
富士山でも「緑・黄・赤」の信号が準リアルタイムで
確認できるようになる可能性があります。
ただし、富士山で想定される
「水蒸気噴火」への対応は、今後の研究課題です。
「南海トラフ」と「固着域」の研究との関係:
「b値で地下の応力状態を可視化する」という考え方は、
プレート境界の「臨界度」研究と同じ発想です。
地震でも火山でも、
「地下の見えない動き」を「見える化」する
技術の進歩が続いています。
これらは、「大地変動の時代」における
日本の地震・火山科学の最前線です。
VTLAS(ブイトラス)が実用化したら、何が変わるか
研究はまだ「学術論文」の段階です。
実際に気象庁の監視システムに組み込まれるまでには、
さらなる検証と時間が必要です。
でも、将来的にVTLASが実用化された
世界を想像してみてください。
・富士山の「信号機」が「緑」から「黄」
に変わった——という速報がスマホに届く
・気象庁の火山監視ページを開くと、
国内の活火山の「今の色」が一覧で確認できる
・「赤信号」が出た火山周辺の住民に、
事前避難の指示が出る
これは決して遠い未来の話ではありません。
「b値の計算」は、
すでにある地震データがあれば今すぐできる計算です。
私たちが今日からできること
VTLASはまだ実用化前ですが、
だからこそ今日私たちにできることがあります。
① 気象庁「火山活動解説資料」を定期的に確認する習慣をつける
現時点では、気象庁が火山の観測データを
月次・随時で公開しています。
特に富士山・浅間山・桜島など、生活に関わりの深い
火山の情報を定期確認してください。
気象庁「富士山の火山活動解説資料」
https://www.data.jma.go.jp/vois/data/report/monthly
_v-act_doc/monthly_vact_vol.php?id=314
tenki.jp「火山活動解説資料(全国)」
https://tenki.jp/bousai/volcano/900/information/
2025-12-08-16-00-00.html
② 「水蒸気噴火」への備えは今から——N95マスク・ゴーグル
VTLASが検知が難しいとされる「水蒸気噴火」。
御嶽山での悲劇が示した通り、
「前兆なしに突然来る噴火」への備えが必要です。
登山・ハイキングをする方は、
N95マスクと密閉型ゴーグルを
ザックに入れておくことをおすすめします。
このシリーズで以前お伝えした
富士山噴火記事で詳しく解説しています。
「富士山噴火が首都圏を変える日」
③ 「信号機が赤になったとき」の行動を事前に決めておく
今はまだVTLASは実用化前ですが、
将来的に気象庁などが「赤信号」の発表を始めたとき、
あなたはどう動きますか?
今から考えておいてほしいこと:
・自宅から活火山までの距離を確認する
・ハザードマップで溶岩流・降灰・火砕流の
到達範囲を確認する
・避難場所・避難ルートを確認する
国土交通省 ハザードマップポータルサイト
(火山ハザードマップ)
https://disaportal.gsi.go.jp/
SONAEAREBAからのメッセージ
「臨界度」「固着域の可視化」「火山信号機VTLAS」
今年の7月は、
地球の「見えない内側」を「見える化」する研究が
次々と発表されています。
地震の「切迫度が見える」
→九州大学の「臨界度」
プレート境界の「固着状態が見える」
→東大・海保の研究
火山の「噴火の切迫度が見える」
→今日の「VTLAS(ブイトラス)」
科学は確実に進歩しています。
「地下で何が起きているか」が、
少しずつ見えるようになってきています。
でも、これらの技術が実用化されるまでの間も、
地震は来ます。
火山も噴火します。
「技術が進歩するのを待ってから備える」
ではなく、「今できる備えを今やる」——
これがSONAEAREBAが
一貫してお伝えしてきたことです。
VTLASが「赤信号」を出した日に、
すでに備えができている人でいてください。
SONAEAREBAはこれからも
「知る防災」を発信し続けます。
最後まで読んでいただき、
ありがとうございました。
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