南海トラフ地震の「どこが一番危ないか」が見えてきた。固着域・スロースリップ・潮汐力——巨大地震の「引き金」を科学する。

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こんにちは!SONAEAREBAです。

今年2026年、
南海トラフに関する重要な研究成果が
次々と発表されています。


今日は、
これらを一本に統合してお伝えします。

テーマは
南海トラフ巨大地震の
『引き金』はどこにあるのか」です。


最新研究①「ひずみがたまり続ける領域が判明」


まず、今年最も重要な
南海トラフの研究成果から始めます。


東京大学、海上保安庁、気象研究所などの
研究グループは、海上保安庁の海底地殻変動観測網
(SGO-A)による11年間のGNSS-A観測データを
解析し、南海トラフ沿いのプレート境界における
固着状態の時間変動を初めて詳細に明らかにしました。

解析の結果、南海トラフ震源域には
長期間にわたり強い固着を維持する
「安定した固着域」と、固着の強さが時間的に
変動する領域が存在することが判明しました。

安定した固着域は主に日本列島南岸に近い海底下に
分布し、巨大地震のエネルギーを蓄積し続けている
と考えられます。

出典:東京大学生産技術研究所 プレスリリース
「南海トラフ沿いの固着は時間的に『変化する場所』と
『変化しない場所』がある」2026年6月4日
https://www.iis.u-tokyo.ac.jp/ja/news/5081/


「日本列島南岸に近い海底下」
——これが重要なポイントです。


静岡・愛知・三重・和歌山・高知・宮崎
の海岸線のすぐ沖合の海底に、
「ひずみを蓄積し続けている場所」が存在することが、
11年間のデータで初めて可視化されました。


「安定した固着域」とは何か


横田准教授らは今回、
海上保安庁の海底地殻変動観測網
「SGO-A」のデータを活用しました。

この観測網で使われている「GNSS-A」技術は、
人工衛星と音響測距によって海底の位置を
高精度で観測し、地殻変動を捉えることができます。

2013年から23年までの11年間にわたる観測記録を
解析し、プレート境界の固着強弱の指標
「すべり欠損速度」を調べました。

出典:Yahoo!ニュース
「南海トラフ沿いのプレート境界の固着状態に
 地域差-東大」
https://news.yahoo.co.jp/articles/
62ec6ce8e0560bbcb8e1a19b99a747bd3c9832c1


「すべり欠損速度」という指標を使って、
「プレートが動きたいのに動けていない部分」
を数値化しました。

この数値が高い場所=
「固着が強い=ひずみが蓄積している」場所です。


今回の研究で明らかになった固着状態の地域差は、
スロースリップ現象とも関連している可能性があり、
想定震源域全体が一様にひずみを蓄積している
わけではないことを示唆しています。

そして、確認された安定固着域は、
将来の巨大地震で大きなエネルギーを放出する
領域になるとみられます。

出典:サイエンスポータル
「南海トラフ沿いのプレート境界の固着状態に地域差」
https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/
20260626_n01/


「将来の巨大地震で大きなエネルギーを
放出する領域になるとみられる」

——これが今回の研究の最も重要な結論です。


「変化する領域」——スロースリップとの関係


一方、固着が時間とともに変化する
「南側の領域」も確認されました。


研究グループはこれまでに、
南海トラフ沿いでスロースリップ(ゆっくりすべり)
現象が発生していることを報告しています。

この現象は通常の地震のような
急激な断層破壊ではなく、断層が数日から
数カ月かけてゆっくり動く現象で、
プレート境界の微妙な力関係に影響を与える
と考えられています。


このシリーズで5月に解説した
「三陸沖のスロースリップ加速」と同じ現象が、
南海トラフでも継続的に観測されています。


整理するとこうなります。

「安定した固着域」(日本列島南岸近く)
 → 11年間変化なく強い固着を維持
 → ひずみがたまり続けている
 → 巨大地震で大エネルギーを放出する候補地

「時間変動する領域」(さらに沖合の浅部)
 → スロースリップと関連している可能性
 → 少しずつエネルギーを解放しながら動いている

最新研究②「超巨大地震は傾きの緩やかなプレート境界で起きる」


さらに今月7月、
もう一つの重要な研究成果が発表されました。


南海トラフ巨大地震の想定震源域内にあり、
地震発生に関わるとみられるプレート境界の
固着状態について、
「長期間ほぼ変化しない領域」
「時間とともに変化する領域」が存在することを、
東京大学生産技術研究所などの研究グループが
明らかにしました。

甚大な被害が予想される巨大地震の規模や
発生過程の理解につながり、事前防災対策への
活用も期待できるということです。

出典:ナショナルジオグラフィック日本版
「南海トラフ沿いのプレート境界、
ひずみがたまり続ける領域が判明」
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/
26/070800384/


この研究が示す最も重要な点は
傾きが緩やかなプレート境界」
で超巨大地震が発生しやすいという新しい視点です。


プレート境界の「傾き(沈み込み角度)」
緩やかなほど、断層面が水平に近くなります。

水平に近い断層面では、
より広い面積で固着が起きやすく、
一度に解放されるエネルギーが大きくなります。


南海トラフは、世界的にも
「傾きが緩やか」なプレート境界の代表格です。

だからこそ、過去に何度もM8〜M9クラスの
超巨大地震を繰り返してきました


「潮汐力」——新月・満月が地震の引き金になるのか


ここからが今日の記事の「新しい視点」です。

SONAEAREBAではこれまでにも
満月・新月と地震の関係を扱ってきましたが、
今回は「固着域の知識」と組み合わせることで、
より深い理解ができます。


「潮汐力」とは何か


「潮汐力」とは、
一般的に物体間に重力が作用するとき、
重力源に近い側と遠い側で異なる重力によって
物体を変形させようとする力です。

地球にかかる潮汐力は、
太陽・月・地球が一直線に並んだとき大きくなります。

つまり、満月と新月のときですね。
その時、海水は大きく歪み「大潮」
呼ばれる状態になります。

出典:宇宙広報団体TELSTAR「月が生み出す力」
https://spacemgz-telstar.com/article/full_moon/a169


潮汐力は「海の潮の満ち引き」
起こす力として知られています。

でもこの力は、
海だけでなく「地球そのもの」にも作用しています。


月や太陽の引力は海水に働き、
潮の干満を生じさせます。

同じように、これらの力は地球自身にも働き、
地球を1日2回大きく変形させます。

この現象は地球潮汐と呼ばれ、
変形した地球の内部には数十〜数百ヘクトパスカル
の力が加わります。

出典:防災科学技術研究所
「月や太陽の引力と地震」2010年
http://j-jis.com/yochi/sun


「地球が1日2回、大きく変形している」
——これは多くの方が知らない事実です。

満月・新月のタイミングでは、
この変形が最大になります。


防災科研の発表——「引き金になる可能性が高い」


2010年1月28日に防災科学技術研究所が、
月や太陽の引力が地震の引き金になる
可能性が高いことを発表しました。

地殻のひずみが十分にたまったときに
月や太陽の引力が地震発生の
最後の引き金になると考えられ、
地震のメカニズムを解明する有効な手がかりと
なるとともに、巨大地震の長期的予測にも
役立つ可能性が期待されます。

月の引力と太陽の引力が重なる、満月や新月の日は、
最大で±60㎝の地盤の変動が起きるため、
地震の最後の引き金になると考えられます。

出典:防災科学技術研究所「月や太陽の引力と地震」


「最大で±60cmの地盤の変動」
—これは小さく聞こえますが、
「すでにひずみがギリギリまでたまっている固着域」
に対しては、「最後の一押し」になりうる変動です。


「固着域」と「潮汐力」の組み合わせで何が見えるか


ここで今日の2つのテーマが交わります。


東大・海保の研究が明らかにした
「安定した固着域
——日本列島南岸の近くで
ひずみが蓄積し続けている場所。

防災科研が指摘した
「潮汐力が引き金になる可能性」
——満月・新月のタイミングで
地盤が±60cm変動する。


この2つを組み合わせると、
こういう仮説が成り立ちます。


「南海トラフの安定した固着域でひずみが
臨界に達したとき、満月・新月の潮汐力が
最後の引き金になる可能性がある」


ただし、
ここは科学的に慎重でなければなりません


科学的な研究では、
満月や新月の時期に地震が発生する可能性を
示唆するデータが得られていますが、
それが地震発生のメカニズムを
完全に解明するものではありません。

研究者たちは、
満月や新月が地震を直接引き起こすか
どうかについて慎重な姿勢を保っています。

現時点では
「潮汐力が引き金となる可能性」
を排除することはできませんが、
それを唯一の原因と断定するには、
さらなる研究が必要です。


「可能性を排除できない」
——これが現時点での科学の正直な答えです。

「満月だから必ず地震が来る」ではありません。

「ひずみがたまりきった固着域に、
潮汐力が加わったとき」
という条件付きの話です。


「転換点」


最近まで、月と地震の関連性を示すことが
できるほど十分なデータがなく、
月の引力は弱すぎて大きな影響はない
と判断されていました。

しかし、この20年間でより多くの広範囲にわたる
データセットが得られるようになったことで、
月の影響がデータから浮かび上がってきました。

月が世界各地の地震の引き金になったケースも
確かにあったようです。


「長い間、この分野を研究するのは愚か者だけだった」
—コロンビア大学のクリス・ショルツ名誉教授の
この言葉が象徴的です。

かつては「オカルト」扱いされていた
「月と地震の関係」が、データの蓄積によって
科学の俎上に乗り始めています。


「固着域×スロースリップ×潮汐力」——3つがそろったとき


今日の記事を通じて、
南海トラフ巨大地震の「引き金」には
3つの要素があることが見えてきます。


①「安定した固着域」
 → 日本列島南岸近くでひずみが蓄積中
 → 11年間のデータで初めて可視化された

②「スロースリップ」
 → 固着の弱い領域で
  ゆっくりとした滑りが起きている
 → 三陸沖(4月20日M7.7後)・
  南海トラフ周辺(5月の気象庁発表)
 → 固着域への応力変化を引き起こす可能性がある

③「潮汐力」(新月・満月)
 → 地盤を±60cm変動させる
 → 「最後の引き金」になる可能性
 → ひずみが臨界に達した固着域で特に影響しうる

この3つは、それぞれ単独では
「決定的な証拠」にはなりません。

でも3つが重なったとき——
「固着域にひずみが蓄積し、
スロースリップが応力変化を加え、
満月・新月の潮汐力が最後の一押しをする」

というシナリオは、
現代の地震科学が否定できないものになっています。


「だから今すぐ備える」以外に答えはない


ここで率直にお伝えします。


「固着域がわかった」
「スロースリップが加速している」
「潮汐力が引き金になりうる」——

これらを知ったからといって、
「次の南海トラフ地震がいつ来るか」
を予測することは、現在の科学ではできません。


でもこれだけは言えます。


「来る条件が揃いつつあることは、科学が示している」


次の満月は今月XX日。

次の新月は今月XX日。

その日に必ず地震が来るわけではありません。

でも「いつ来てもおかしくない固着域が存在する」
ことは事実です。


今日確認してほしいことが3つあります。


① ハザードマップで
 南海トラフ地震の津波到達域を確認する
 https://disaportal.gsi.go.jp/

② 「南海トラフ臨時情報」
 が出たときの行動を家族で決める
 気象庁「南海トラフ地震関連情報」
 https://www.jma.go.jp/bosai/nteq/

③ 在宅避難の備えを今週点検する

在宅避難シリーズ総まとめ


SONAEAREBAからのメッセージ


「固着域」「スロースリップ」「潮汐力」——

どれも難しそうに聞こえますが、
今日伝えたかったことはシンプルです。


「南海トラフの地震がどこで、
どのように始まるかが、
科学によって少しずつ見えてきている」


見えてきたからといって、
「明日来る」とは言えません。

見えてきたからこそ、
「いつ来てもいい備えを今日整える」
という行動が意味を持ちます。


次の満月・新月が
「引き金」になるかどうかはわかりません。

でも、備えている人は、どんな日でも守られます。


SONAEAREBAはこれからも
「知る防災」を発信し続けます。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。



「空間にマスクする感覚」地方自治体避難所開設用パーテーション